
曲げわっぱの作り方とは?完成までの工程に迫る
曲げわっぱの製造工程
1、製材
大館工芸社で曲げわっぱを作る一番初めの工程は、仕入れている板材を割る「製材」です。製材をしなければ曲げわっぱを作り始めることができません。
以前は、天然秋田杉の丸太を仕入れて製材をしていましたが、国が資源保護政策に転換し平成25年度以降の天然秋田杉の伐採が禁止され、市場への供給が途絶えたため、今は板材を仕入れて製材をしています。
商品の側や蓋など、それぞれ必要となる材料の厚さが違うので「2分」「2分3厘」「3分5厘」「5分」の4つの厚さに割っています。ちなみに2分は約6ミリ、2分3厘は約8ミリ、3分5厘は約11ミリ、5分は約15ミリです。
製材をした後は、厚さを調整することができる機械で、さらに薄くしていきます。
2、木取加工(部材取り)
前行程の製材で4つの厚さに切り分けた材料を丸鋸で所定の長さや幅に揃える「木取加工」を行います。
3、はぎ取り
所定のサイズになった板をベルトサンダーという楕円形につながっている機械を使用して、手作業で板の両端を薄く斜めに削る「はぎ取り」をします。
はぎ取りをすることで、曲げた時にきれいな接ぎ目にする事ができます。
4、曲げ加工
ここまできたら、いよいよ曲げわっぱの特徴ともいえる「曲げ加工」をしていきます。曲げわっぱ作りにおいて非常に重要で、熟練の技が求められます。
板を曲げるために、はぎ取りした板を95度以上の熱湯に1時間以上浸します。次に、熱湯から取り出し、熱いうち(95度前後)に専用の型に合わせて素早く素手で曲げます。この一瞬ですべてが決まるため、技と経験に基づく絶妙な力加減が必要となります。曲げた輪は、形が崩れないように木バサミでしっかり固定し、一日かけて乾燥させます。
5、接着
乾燥がしっかりできたら、固定していた木バサミを外し、曲げた材料を「接着」します。
6、桜皮綴じ
乾燥後は、山桜の皮で縫い止めをする「桜皮綴じ(カバとじ)」をしていきます。接着をしたところに刃物で隙間を開け、そこに桜皮を通していきます。昔は曲げた輪を固定する役割でしたが、今は装飾の意味合いが強いです。商品によって縫い方も様々あり、例えば、小判弁当は大・中・小とサイズが3種類ありますが、それぞれ縫い方が違います。(下記画像参照)小判弁当(小)
小判弁当(中)
小判弁当(大)
7、蓋、底入れ
カバ縫いが終わったら、蓋板または底板をわずかな隙間もないように曲げた輪にピタリとはめ込み、接着をして乾かします。
8、面取り
蓋、底入れ後は曲げわっぱの角を取る、「面取り」を手作業で行います。面取りをすることにより、角が立たず、手触りが良くなります。
お弁当箱などは次に塗装作業がありますが、「おひつ」など無塗装の白木製品は面取り後に検品をおこない、完成となります。木肌の風合いを活かした無塗装の白木製品は、使う毎にふんわりと杉の香りが漂います。
9、塗装
面取り後は、ウレタン塗装を施しています。そのことにより、「強度が強くなる」「変形を防止することができる」「お手入れがしやすくなる」というメリットがあります。ウレタンは油や汚れに強いという特性を持っており、油分のあるおかず等でもシミになりにくく、ご使用後はスポンジに家庭用洗剤をつけて、サッと洗う事ができます。
デメリットとしては、ウレタン塗装をすることで杉の特徴である調湿効果が無塗装よりも減ってしまうというのがあります。しかし、塗装をしても調湿効果が完全に失われるわけではなく、むしろ調湿効果を保ちつつ、お手入れのしやすさから長く使うことができます。
大館工芸社では「下塗り塗装、乾燥、研磨、仕上げ塗装、研磨、乾燥」という順番で塗装を行っています。なぜ2回塗装をしているかというと、「1回塗りよりも強度が強くなり、耐久性が向上する」「塗りムラを無くし、均一で美しい仕上がりにする」ためです。
また、下塗り塗装をすると、塗膜の表面に凹凸ができザラザラになるので、紙やすりを使い、手作業で全体を磨き、表面をなめらかにしています。磨き作業は力加減が難しく、磨きすぎると塗膜が剥がれてしまい、軽く磨いただけだとザラザラのままになります。塗膜が剥がれないように且つ、表面がなめらかになるように磨かなければならないので、繊細で丁寧な熟練の技が必要となります。
10、検品
品質を維持するために1つ1つキズや欠けがないか熟練の社員による目視と指先による細かい「検品」が入ります。
11、梱包
最後は検品が終わった蓋と本体の色合いをみて、同じ色合い同士で組み合わせ、薄紙で包んで、箱入れをして完成となります。